ぐいぐいと読まされてしまった。
ハードボイルドワンダーランドと
ダンスダンスダンスと
少年カフカを足して3で割るとこの作品に
なるんすかね。
少年カフカは割合としてはきわめて低い。

違う点は主人公のスペックがかなりフィジカルに
のみバージョンアップしている点くらいかもしれない。

それがどういう意味をもたらしているのかは、
2009年という現在が反映されているものなのかもしれない。
世界はタフで親切さがないといいきられている箇所から推測して、
至った結論なんだけど。

相変わらずの村上節爆裂の文章ではあったような気がする。
よくわかるけどヘンなたとえとか。
後手に回って劣勢を強いられる主人公だったり。
女性が強すぎたり。

現実が実は薄皮一枚でかろうじて均衡を保っているきわめて脆弱なもので
あることに思いを強くした。
村上龍の「5分後の世界」ほどラディカルでサディスティックな世界には
なってはいなかったけど、実としての内容はそれをしのぐものであったと
わたしには思えた。

20世紀少年にもみられたが、ここにも教祖的なキャラが登場する。
馳星周の新刊にもグルなんてのがいた。
新興宗教とはビジネスモデルのひとつのかたちに過ぎないといったのは、
創価学会2代会長の戸田城聖だ。
彼自身は彼の起こしたビジネスの相次ぐ頓挫で苦渋を舐めているが。
宗教をもちいたセンテンスというものが文学のなかにおいてのトレンド
とみるのか、精神性の深層を模索していったうちに突き当たった問題なのか。
銀河英雄列伝に出てくる宗教団体は、単なるすかぽんたんでしかなかったなあ。

今回の村上作品にでてくる教祖的な人物は世俗的には、
即射殺されてもしょうがない下衆野郎であり、かつこの物語を構成
する上できわめて象徴的、そしてきわめて聖なる存在として位置していた
ような気がした。
そしてそのような人物がスパイラルになっていて連続していくかのような
感じに読めて、わたしは気持ちが悪くなった。
作者の底意地の悪さとみたらいいのか?とさえ私は思ってしまった。

作品は2巻完結だと思う。
最後まで読んだが、余計な物語は投げっぱなしにされ、
伝えたかっただろう着地点というべき場所できっちり終わっている。
表面的な起承転結でいえば承で終わりのさっぱりさかもしれない。

いろんな方面のひとが嫌な感じになるはずの文章満載の作品であることは
間違いが無いのに、ここまで派手に売れてしまうっていうのもなんか
底意地の悪い感じを持ってしまうんだけどどうだろう。
それで特にさざなみひとつ起きていない状況の深刻さなんかも考えて
しまった。

大問題作と思うんすけどねえ。





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